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とある教室の最後の一日

執筆者の写真: 加藤 幸也加藤 幸也

 公立高校入試前の最後の一日。


 授業が始まる9時30分。ほとんどの生徒が着席しているが、いつもギリギリになって来る生徒が来ていない…。みんなの前で「一人来てないな…?」と言った途端にその生徒は来た。これまで何度も「あと5分早く家を出てきなさい」と言ってきたのに、最後の最後までギリギリか…こういうのはなかなか変わらないもの。入試の日はだいじょうぶかね…。


 授業が終わる何分か前にみんなに伝えたいことを伝えるのが良いのかもしれないが、自分の場合はすぐに伝えた。伝え漏れがないように、伝えたいことをあらかじめ紙にまとめて印刷しておいた。

 まず、それに触れる前にまずみんなに質問してみた。「先週、僕が言ったことを覚えている?」みんな引っ込み思案だから、下を向いて黙ったまんま…。だが、すぐさま1人の女子が「はいっ!」と挙手。「メンタル…ですよね!?」と。(まぁ…当たってはいるけど、もうちょっと詳しく言ってほしいかな…)と思いながら、「そうね。ネガティブなことは考えない。口に出さない。そういうことをしていると、現実になってしまうから」(あぁ…ちゃんと自分が言ったことは聞いてたんだな。覚えてたんだな。)と心の中で安堵した。3週間前から口酸っぱく言ってきた効果はあったんだ。

 その後、伝えたいことをまとめた紙を一人一人に配布。伝えたいことは10点。本当は言いたいことは数えきれないほどあるが、そのうちの10点を。それはざっくり言うならば「落ち着け」「緊張してるときは深呼吸」「自信を持って」「一つの科目ができなかったからといってあきらめるな」「漢字が分からないときは無理するな、ひらがなで」「常に試験時間を気にして」「休み時間は休め」「周りの生徒は見るな」「前の日は早めに休み、当日は早めに起きなさい」「入試を楽しめ」みな真剣に聞いていた…はず。

 そして、「合格したときはLINEで報告してね!万が一残念だった場合はLINEは要りませんよ。去年ね、合格したらLINEをくれって言ったのに、全然くれない生徒がいてさぁ。連絡来ないからもしかしたらダメだったのかな…って、オレ、ドキドキしてて、ずっと待ってて、そしたら1~2時間くらいたってからかな、LINE来て。合格しました!って。なんかね、家族で食事かなんかに行ってたんだよ!こっちに合格の報告をしないで、メシ食いに行ってたんだよ!」って言ったらみんな爆笑。「みんなはちゃんとすぐに連絡ちょうだいね」と優しく念押し。

 授業終了5分前。締めの言葉を。「一年間、この日(入試)のために頑張って来たんだ。これまで頑張ってきたことを思い出してごらん。頑張ってきた自分を褒めてあげたいから、みんなで盛大に拍手をしよう」20秒ほど、2階の住民に怒られるのでは…?と思うほど長く、そして力強く、割れんばかりの拍手で締めくくった。


無事に全員合格してくれることを信じています。


 
 
 

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